となりの読書会。

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読書会っておもしろい♪ 大阪府豊中市で開催しているママ向け、子ども向け読書会の記録と 、子どもとの遊びネタ、手作りおもちゃ、おもしろい本の話などを書いてます。 お子さんを喜ばせたいママ、 読書が好きな人、ぜひのぞいていってくださいね。

三日月形の木漏れ日、知ってる?―『野川』

先日、部分日食があったそうな。

 

あーー!!

みたかったーー!!

 

数年前の皆既日食は見た。

 

部分日食を直接観測するなら

そこまで興味はなかったと思う。

 

けど

 

野川 (河出文庫)

野川 (河出文庫)

 

『野川』を読んだあとの私は

部分日食を、見たくて仕方なかった。

 

この本に、でてくる中学生たちは

夏休みに皆既日食を見られるはずだった。

しかし、あいにくの曇り空で

観測はできなかった。

 

太陽が三日月形になると

木もれ日も、三日月形になるらしい。

今回の毎日新聞の記事にもこんな写真が

載っている。

f:id:tonarinodokushokai:20190109173314p:image

 

かつて理科部の生徒が観測した

部分日食の観察日記で

三日月形の木もれ日の写真をみた

生徒達は、ためいきをつく。

 

望んでも手に入らないものについて

聞いたり読んだりする、

かすかな腹立たしさ。

 

 

あー。

むっちゃわかる。。

私も同じ気持ちだよ。

自分の目で見たかったよー。

 

そんな生徒たちに先生は

 

「今、先輩たちの記録で

それを見たじゃないか。

どこが不足なんだ。

自分の目でみたものでなければ

自分のものにならないと本気で思うのか?」

と、問う。

 

「現実かどうかが重要なんです」

と、生徒の一人が言う。

 

そうだそうだ!

先生そうだよー!

レポートや新聞記事じゃ

満足できないよー!!

 

生徒たちにもろ感情移入してしまう。

 

そんな、生徒たちに

先生はある話を聞かせてくれる。

 

それは、先生が15年前に

ある年配の女性から聞かせてもらった話。

 

その女性が話した過去の話なので、

今から60年以上前の話になる。

 

先生はその話を聞いて、

「自分の目で見なくても

記憶となる風景が、

この世にあるんだということを知った」

と言う。

 

 

先生が語るこの話を読むと

目の前にその光景がありありと浮かぶ。

 

その光景は、

これまで見たこともなければ

この先も決して見ることはできない

ため息が出るほど美しい光景だ。

 

でも、わたしの記憶の中に

まるで自分で見たかのように、

その光景がありありと蘇る。

 

その先生の話をもう一度読んで

私も三日月形の木もれ日を見られなかった

ぶーたれた気持ちをおさめようと思う。

 

読んで忘れてしまう小説が多い中

この本は、頭に浮かぶ

映像とともに覚えている。

 

この本は、

文字を使って、

もう見られない光景や

決して人間が得ることのない視点から

風景を見せてくれる本だ。

 

『野川』いい本。

 

 

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以前に書いたこの本の

書評はこちら。